映画「タイヨウのうた」~主人公は色素性乾皮症(XP)~

またムービックスのポイントがたまっていたので、一人で、「タイヨウのうた」を見てきました。暗闇でも目が利く人がいたら、映画が始まって早々に、私が険しい顔になっているのが見えたでしょう…「こんなことじゃないか」と事前に予想していた通りの映画でした。映画を見て腹が立ったのは久しぶりです。

そもそも、ラジオの映画評論で、「とてもいい映画です!」と絶賛していたのを聞いたのが、この映画のことを知るきっかけでした。「色素性乾皮症(XP)を題材にした映画があるなんて!」ビックリして、見たいなぁと思いました。知人に、色素性乾皮症(XP)のお子さんを持つ人がいるからです。

しかし、ちょっとその映画についてHPなどを下調べしてみたら、「………???」なに、これ?ちゃんとXPについて描いた映画なの?なんか違う気がする…嫌な、イヤ~な、予感がしました。

色素性乾皮症(XP)は、日本全国でも500人程度の患者しかいない、珍しい難病です。私は知人のおかげで、この病気についてある程度なら知っているのですが、最近では、宮城県在住のXPの双子のお子さんの家庭の様子が、テレビで何度か特集を組まれたりしているので、聞いたことがあるという方も増えたのではないでしょうか。

色素性乾皮症(XP)…進行性の難病です。年齢があがるにつれて様々な神経症状が現れ、若くして死に至ることが多い、非常に酷い病気です。XP独特の特徴というのが、紫外線が害になるということ。紫外線に当たると、ヤケドのようになり、常人の二千倍も皮膚がんになりやすい。そのため、日光に当たることができず、窓から入ってくる紫外線も浴びてはいけないのです。

XP連絡会のHPには、次のように記載されています。
色素性乾皮症(XP)は、皮膚と脳神経に重い障害が生じる、進行性の、治療法が未確立で、原因不明の、稀な病気です。」

進行性の」…わかりますか?小児の頃から神経症状が確実に進んでいくのです。

この「タイヨウのうた」の主人公、16歳の雨音薫(あまねかおる)は、朝寝て、夜起き、ギターを抱えて夜の街に出て、道端で歌います。自宅の窓から外を見ているときに見かけた男の子が気になっていて、夜の街で偶然見かけて、全速力で走って追いかけて、「彼氏はいません!」とかっていきなり迫ったりします。

…ねえ、XPって、こんなものじゃないはずです。
映画の中でも、医者に向かって主人公の母親が、「(日光に当たれないこと以外)普通の子と変わりません」って言ってるんですけど、

なに、言ってるんですか…?
単に「日光に過敏な皮膚の病気」ではないでしょ?
日光により多大な影響をこうむるのは事実だけど、本当の問題はそれよりも、遮光していても進行していく神経症状にあるはずです。この映画では、神経症状についての正しい描写がなされていず、あり得ない状況を前提として話全体が作られています。15歳以上のXP患者の状態は、本当は非常にシビアなものなのですから。

私がこの映画を見ていたときの率直な感想は、「この映画は作り手の誠意が感じられない」ということです。病気の真実を伝えて、理解を求めようなどという気はなく、単なる恋愛映画をロマンティックに盛り上げる材料として、XPを使ったとしか思えませんでした。

ふた昔前なら、「白血病」だったのが、今度は「XP」に置き換えたというだけだと思うのです。

だってこの話からXPを取り除いたら、ただのベタな古典的青春恋愛映画です。格別、見るべきところはありません。あきらかに、「ムーン・チルドレンとサーファー青年のかなわぬ恋」…ってところがキモであり、恋愛を悲しくもロマンティックに盛り上げる材料となっているのですから。

大体ね、この主人公の女の子、お肌つるっつるのピッカピカなんですよ。これだって、あり得ないでしょ?「色素性乾皮症」という名前は、皮膚症状からつけられた名前なんです。「色素性乾皮症(XP)という病名は皮膚症状から付けられた病名です。そばかす様の色素沈着があることと、日焼けを常に起こしているのでその炎症の結果として常に鱗屑(フケのような物)が付着していることから命名されました。」と、XP連絡会のHPにも載っています。この映画の主人公は、とてもそんな風には見えませんでしたが…

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(C) 2006「タイヨウのうた」フィルムパートナーズ


映画の中で、お父さん役の岸谷五朗が、「おれはこいつを一瞬たりとも日光に当たらせなかった」とかって言うセリフがあるんですけど、それだって非現実的ですね。たとえば上に兄弟がいて、その子がXPだから、下の子もその可能性があると思って、生後から徹底的に遮光したとかいうならともかく、一人しかいない子どものことを、生まれたときから一切外に出さないなんてありえないでしょう?車に乗ってたって紫外線浴びるんだし、窓からも紫外線入ってくるし、電灯からも紫外線、出てるんだし。絶対になんらかの皮膚症状はあるはずでしょ?

それにね、こんなにも知的になんの問題も無く、足腰も丈夫なら、どうして家にいるわけ?100歩ゆずって、この主人公が、実はXPの中でも非常に稀なほど軽症の子(そんなことがあるなら)だという仮定だとしてもですね、ふつうに考えたら、例えば教育委員会に言って、遮光フィルムを貼った教室を設けてもらって、高校に通わせるはずでしょうが。重篤な子だって養護学校高等部に行ってるのに。こんなにピンシャンしていて、家にいつづけなんてあり得ないでしょ。

映画の後半、病状が悪化して麻痺が出、突如として車椅子になったときだって(ちょっと前まで思いっきり走ってたのに)、知的には普通のまんまだったし。そんなバカな?歩けなくなるほどひどいのに、知的には普通のまんま、ソバカスひとつ無い、きれいな顔のまんまで、死んでしまうとは…

この映画のスタッフは、ちゃんと患者さんたちに会って取材したこと、あるんでしょうか…?この映画の俳優さんたちは…?

映画の中の病院の待合シーンで、岸谷五朗が、他のXP患者を見かけるシーンがあるんですけど、その患者は、車椅子に乗り、皮膚症状が出ていました。あれだけが、あのシーンだけが、唯一真実と言えるシーンではないでしょうか。




XPは大変な病気にも関わらず、難病指定されていません。難病指定されていないと、患者側にとって治療費の負担が重いというだけでなく、病気の原因の解明や、治療法の研究も進みにくいので、患者団体は、難病指定を求めて、署名活動を行っているようです。

ですから、患者団体とて、「病気の知名度をあげたい」とは思うでしょう。それは当然のことです。しかし、このような間違った形で映像化されることは、本意ではないのではないでしょうか。ある当事者(患者家族)のブログを見たのですが、この映画・ドラマに大変激怒されていましたよ。当然ですね。

映画の作り手は、「これは病気のことを主題にした映画ではない、あくまでも恋愛映画なのだ」と言いたいのかもしれませんが、少なくとも、その病気をネタにするのであれば、その病気のことを正確に伝えようと最大限の努力をすることが、その病気で苦しむ人たちに対する最っ低限の礼儀じゃないでしょうか…???

本屋でこの映画の原作本を手にとって見ると、「この小説の中のXPの描写は、実際のXPの症状とは異なるところがありますことをご了承下さい」みたいなことが書いてありました。

そんなことがまかり通るなら、どんな病気・障害も、「実際とは異なります」って注釈をつければ、どんな描き方をしてもいいってことになりませんか?私は、自閉症のことが、間違った描き方をされるのはとても嫌ですが、XP患者のご家族でも、それは一緒じゃないのでしょうか。

ネット検索してみると、多くの人がこの映画に感動し、「私は今まで、こんな病気があることを恥ずかしながら知りませんでした…」とかって書かれています。恐ろしいことです。この映画で、XPのことを判った気になっている人がどれだけ大勢いるのかと思うと…そして7月14日から始まる金曜ドラマで、もっともっと誤解が広まるのかと思うと…

この映画を見たなら、そしてドラマを見たなら。それをきっかけとして、「本当の」XPについて知る努力をして欲しいものです。こんなきれいごとじゃありません。私の知人は、介護と仕事の疲れが高じて、倒れ、入院したこともあります。この病気と闘う患者とご家族の日々のご苦労を、きちんと理解した上で、署名活動に協力してほしいものです。

XPを難病指定に!の署名活動はこちらからhttp://www.geocities.jp/xp_shomei/index.html

私自身はXP患者の親ではありませんが、自閉症という障害の子を抱える親として、とてもひとごととは思えませんでした。この映画と比較すると、韓国映画「マラソン」は、なんて素晴らしいのでしょうか。障害について正確であるばかりでなく、本人や家族に対する愛情が感じられ、本当にその立場や思いを理解し、見た後に爽やかな感動を残します。改めて思います。難病や障害の映画を作るなら、あれくらいの誠意を持って、作ってください。





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