映画(DVD)「ロレンツォのオイル」~自閉症=水銀原因説にからめて~

1992年作品(アメリカ)。副腎白質ジストロフィー(ALD)という難病に冒された少年の両親が、子どもの回復のために全てを投げ打って打ち込み、ついには、化学者でもないのに、病気の特効薬を発見してしまうという事実に基づく映画です。ALDの発症初期の症状は、ちょっと自閉症に似ているようです。5歳~10歳の男の子に限って発病し、歩行困難や言語障害など、どんどん進行して、2年ほどで死に至るという大変恐ろしい病気です。

この映画、ずいぶん昔に、友達が「(キムのような娘のいる)あなただったら、きっと見ると泣けるわよ」とか言っていた作品。ずっと見逃していて、ようやく見ました。うーん、でもなぁ。ほとんど泣けなかった。いや、すごい映画でしたよ。でも、涙腺に来なかった。マジに見てしまって、じぃ~んって感じではなかったのは、なぜだろう…

この病気は、母親だけに遺伝していくんですって。そして男の子にしか現れない。色覚異常の遺伝と似ていますな。ロレンツォのお母さんは、自分がキャリアだったからロレンツォが発病したのだということを知らされて、ものすごくショックを受けるんですね。その後の鬼のような病気治療への熱意は、このへんも原因になっているに違いないと思います。

私にも覚えがあります。自分の育て方が悪かったからキムが自閉症になったのじゃないかと思っていた時期があるからです。自分が悪かったなら、なんでもしよう、これからこの子のためになることならなんでもやって、ちょっとでもキムが良くなるなら努力を惜しむものかと思ったものです。(実際には育て方のせいで自閉症になるわけではありません。先天性のものですから)

この映画を一言で言うと、「目を覆いたくなるような壮絶さ」で、圧倒されてしまう。怒鳴りあうシーンがいっぱいあるし。ロレンツォが苦しむ様子もめちゃくちゃ可哀想。やめてあげて~って言いたくなるのよ。自分の子だったら、こんなの堪えられないわ。家庭が崩壊する寸前まで行って、なおも子どもの回復を願ってやまない両親の愛というよりは執念には、ただただ、恐れ入ってしまいます。

この映画を見て思い出さずにいられなかったのは、数年前に問題になった、「自閉症=水銀原因説」です。これは、自閉症になる原因は、子どもの頃に受けた予防接種の中に含まれる水銀(チメロサール…ワクチンに含まれる防腐剤)が原因であり、体内から水銀を排出すれば、自閉症が治るのである、とする説なのですが、某テレビ局が、こともあろうに報道番組で取り上げたため、一時期、日本の自閉症現場を騒然とさせました。

「ロレンツォのオイル」の中で両親は、まず「オレイン酸」が効果があるということを発見し、その摂取で実際に一時的に効果が出たものだから、矢も盾もたまらず、「他のALD患者の親にもこの結果を教えるべきだ」と、ALD基金の財団の会長夫妻に迫るというシーンがあるのですが、もしこれが、「水銀説」だとしたら…と置き換えると、ううむ。

映画では、この「ALD基金の財団の会長夫妻」というのは、恐ろしくわからずやのように描かれているのだけど、見方を変えれば、極めて常識的な人々です。すなわち、「結果がまだはっきりとしていない治療法を、むやみに人に薦めるべきではない」と言っているわけです。(そして実際にその後、オレイン酸だけでは不完全で、治療効果は中途半端なものになってしまうということがわかったのです)

自閉症に関しても、一時期、「水銀を対外に排出せねば!」と多くの自閉症児の親が決心し、水銀排出のための「キレート剤」を手に入れるにはどうすれば良いのかを必死で探したはずです。(キレート剤は日本では無認可のため、外国から手に入れる必要があった)

しかし、少し冷静な人たちは、「他の人の結果を見てからでも遅くない」と思ったわけです。「不確実な治療法を、大事なわが子に試して、万が一なにかの副作用でもあったら…」と考えたわけですね。そうしているうちに日本自閉症協会がこの説に対し否定的な見解を発表、高名な先生方も次々と否定的な声明を発表し、「自閉症の原因は、“水銀だけ”などという単純なものではない」と結論づけました。

実際、スウェーデンなどでは早期から、予防接種を水銀の含まれないものに切り替えていたにも関わらず、全世界的な傾向と同じくして自閉症が増加し続けているという事実と照らし合わせると、この説を肯定する理由がないのです。

それでも、このテレビ番組中では、数人の外国人の母親たちが、「水銀の対外排出をしたら、うちの子はすごくよくなってきた」と語っているもんですから、心中穏やかならざる人は多かったはずです。し・か・し…私は思いました。この説が本当なら、遠からず、世界的に認められ、学会かなにかで発表され、下手したらノーベル医学賞を取るかもしれない。(だって「自閉症の根絶」ですからね!)もしもそうなったら、やってみようかな…

第一、そのころのキムは薬を飲んでくれない人だったので、キレート剤なんて飲んでくれっこないから考えるだけ無駄、と思ったのも事実ですが…(^^ゞ

あれから4年近くたちますが、いまや「水銀説」はまったく聞かれなく(一部の人が惑わされてるかもしんないけど)、世界的な定説にもなっていないのでした。結局、やはりそんな単純な話ではないのです。

ハナシが思いっきりそれてしまいましたが、そんな経験もあるので、この両親の異常とも言える熱意に、ちょっと引いてしまう気持ちもありました。私たち障害児の親というのは、(障害児の親を10年もやっていれば)「障害というのは治らないから障害なんだ」と思っているので、「治る治る」と騒ぐ人を見ると、一種冷ややかな目で見てしまう傾向があります。だから、この両親に対しても、ついそんな目で見てしまう部分もあったかも…

でもね、この両親には時間がなかった。死まで2年と言われて、その間にできることはなんでもしようと思ったのは理解できないわけじゃありません。私たち障害児の親は、逆に「一生この子と共に生きていくんだ」という覚悟があるので、水銀のことにしても、「2、3年待ってからでも遅くない」と思えるけど、この人たちはそんな悠長なことを言っている時間がなかった。だからここまで、狂乱とも言えるほどに、治療法発見のためにすべてを捧げ尽くしたんでしょうね。

不思議だったのは、高名な医者を招いてシンポジウムを開催したりとかしちゃうんだけど、全部「私たちがお金払いますから!」と言えること。このお父さんが銀行員だからかな?それにしてもなんでそんなに無尽蔵に金がある?パパは寝食も忘れて、治療法発見のために図書館に通いつめ、しまいにゃ素人なのに論文まで書いてしまうわけだけど、その間、銀行は休んでたの?首にならなかったの??

まあ、家を抵当に入れた、とかも言ってましたけど…それにしてもすごいよね。やはり最後は金だろうか…。ううむ。

結局のところ、この「ロレンツォのオイル」という特効薬は、オリーブオイルと菜種油のそれぞれの主成分からできているという、極めて単純な(と思える)ものだったんですが、でもそれを発見して、世界中の男の子が救われたなんて、ほんとに素晴らしいですよね。このご両親の執念と愛情に万歳といわねばならないでしょう。
万歳!




もし「自閉症に効くオイル」が発見されたら?

そのとき私はそれをキムに使うかな…?





この答えは…またの機会に。









この記事へのコメント

ミキ
2006年07月19日 22:22
はじめまして。知的障害のある最重度の自閉症の6歳の次男がいます。この映画、たまたま、次男がお腹にいる時に、NHK教育テレビで見まして、思わず号泣してしまいました。その時は、
まさか息子が自閉症だなんて知るすべもありませんでした。自閉症=水銀、三角頭蓋、など、いろいろ出てきますが、はっきりした治療法も
出ず、療育と動作法訓練をする日々です。身近に、キレーションしている人は何人かいますが、私は副作用が怖いのとお金がかかりすぎるのでしてません。日記、お気に入りに入れさせていただきました。勉強になります。楽天で「自閉症児の泉 空中庭園」というブログを
細々と書いています。よかったら遊びにきてくださいね^^)

2006年07月19日 22:58
ミキさん、いらっしゃいませ!
おお~、ようやく自閉症関係者が来てくれた(^_^;)
キレーションしてる人、やっぱまだいるんですかぁ。やめなよって言いたいですけど。体に悪いですよ、必要なミネラルまで奪われるし。
でも就学前の年齢だと、まだ、できれば治したいと思うでしょうね。無理もないと思います。2年前の私ですら、治るもんなら治したいと一瞬、考えてしまいましたからね。
しかし時は人間を変えていきます。たった2年でも、人間ずいぶん考え方も変わります。
私のブログは、自閉症児の子育てに関するノウハウというものは、ほとんど出てこず、せいぜい「旅行のノウハウ」くらいしか出てこないのですが、今のキムの持っている能力で生きていく術を考える段階に来ているからなんです。療育や~法にこだわる時期は、過ぎたなぁと感じています。色々やってきましたけどね(遠い目)
ミキさんのブログにも、また遊びに行かせてもらいますね!よろしくお願いします♪

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