ハワイの話、8の2。

さてさて、マウイ4日目の朝が来ました。
朝、ホテル玄関前のベンチに座って待っていると、「エディさん」が迎えに来てくれました!「エディさん」は、年齢は私とうちの旦那の中間くらいのようです。エディさんの車に乗り込んで、シュノーケルポイントへ。って言っても、それは私たちが泊まっているマウイ・プリンスホテル前のビーチなんです。エディさんが、ここでしましょうって言うので、ここに決まり。私たちもホテルが近いほうがいいし。

ビーチに近い、ビジター用の駐車場に車を停めて、荷物を沢山運びながらビーチに向かいます。このガイドツアーは、軽食もついているので、その用意なんかもあるみたいです。ビーチの向かって左端の、ちょっと小高い丘の上に、荷物を置きました。ここにはベンチやテーブルもあります。

私たちが荷物を広げたその近くでは、どうやら結婚式をしているようでした。この丘から、美しいマルアカ・ビーチと、ウェストマウイが一望にできるので、ここはオンザビーチの結婚式スポットとして人気があるようです。別に、あずまやのようになっているとかでは全くなく、ただの野外ですが。とにかく見晴らしがいいんですよね。神父さんを前に新郎新婦が誓いの儀式をし、周囲に友人が数人程度いて祝福しています…しかも新郎新婦は熟年カップル。なんだか、ロマンチックでしたよ~(^^)こういう結婚式、いいなぁ。

さて、シュノーケルについてレクチャーを受けました。私は、乗り気ではあったし、泳ぎも習っていて、少しだけなら泳げるわけなんで、大丈夫かとタカをくくっていたんですが、実のところ、海は何年も入っていなかったんです。いや、何十年も。大体、この時点では、足のつかないところで泳いだこと、なかったし!

マウスピースをしっかり噛んで、口だけで息をしなきゃいけないという当たり前の事実を前に、急に緊張してきました。やばいかも、やばいかも…できないかもぉ(@_@;)いざ、海に入ると、当たり前だが波がザバーンザバーンと来ます。怖い!足がつかないところなんて行けないよう(T_T)緊張のあまり、口が少し開いていたようで、水を飲んでしまいました。

エディさんが、私がパニクっているのに気がついて、フォローに飛んできてくれました。体にはいわゆる「どすこいベルト」という、浮きを腰のところにつけていたんですが、それをもうひとつ、胸のところにも入れるようにさせてくれて、結局、だんなが持っていたビート板みたいなものにもつかまりながら、旦那と二人でシュノーケルするような形になりました。こういうとき、旦那のほうが圧倒的に落ち着いています。びっくり。言いだしっぺの私がビビっているというのに、旦那は、冷静に口で息をして、シュノーケルを楽しんでいるようです。「あ、海亀がいた!すぐそこを泳いでた!」と叫んできました。まじで?だってまだ、ビーチに近いところで、下は砂地なのに。残念ながら、私はそのときは見逃してしまいました。

エディさんが、もっと沖に行かないと全然きれいじゃないというので、沖に出て行きます。めちゃめちゃ深いです(私にとっては、です)。ちなみにロンはというと、エディさんといっしょに窓のついたビート板みたいなものから、水中を覗いていました。ロンの命はすべてエディさんにかかっているというのに、母まで面倒かけちゃってすみません(T_T)私も、最初はすごく下が深いので、怖くて怖くてしょうがなかったんですが、次第に落ち着いてきました。
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落ち着いてみると、なーんてきれいなんでしょう、海の中は!さっきまで下はただの砂地だったのに、今や眼下には色とりどりのリーフが見えます。きれいだ~(感涙)。きれいすぎる。こんなんあっていいの?生きてて良かったと感じる瞬間です。人がなぜ旅をするのかといえば、見たこと無い美しいものを見て、経験したことの無い素晴らしい体験をしたいからですよね。私は海には縁遠い人間で、多分ダイビングは一生しないと思うけど、それでもシュノーケルで海の中を見られて、本当に良かったです。

海の中を見て感激していると、いた!海亀が下を泳いでいきました。でかい!なんて優雅なの。まるで空を飛んでいるように、ひれを動かして泳いでいきます。さらにエディさんが指差すほうを見ると、下のほうのリーフの谷間あたりに、もう1頭見えます。寝ている?みたいです。もうもう、涙モノです。
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海亀にも遭遇し、写真も撮ってもらい、ビーチに引き返すことになりました。途中、エディさんが下にもぐって、変わった海中生物を取ってきては、ロンに見せてくれます。(取ってきたやつは、また元に戻します)慣れてきて楽しくなってきた頃に、シュノーケル体験は終わりました。

さて、一体私たちがシュノーケルしている間、キムはなにをしていたんでしょう?そう、ごめんね、ビーチで待たせていたんです。彼女は木陰で、ゲームしていました(T_T)さすがに暇だし一人はいやだったんでしょう、砂地を歩いて、私たちを迎えに出てくれました。ごめんね、キム…ほんと身勝手な親ですね。以下2枚は、キムが待っている間に撮った写真です。
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やっぱ、カワイソーだよな(T_T)

丘の上の荷物置き場に戻って、コーヒー飲んで一服。「まだシュノーケルもう1本しますか、それとも、この奥にイルカの来る入り江があるんですが、それを見に行きますか」と聞かれ、キムが段々不機嫌になってきているのを肌にピリピリ感じていた私は、シュノーケルは(したいけど)もうやめよう、と思いました。再びエディさんの車に乗り込んで、出発。

レンタカーでは走行してはいけない地域に入って行きました。道はアップダウンがあり、ところどころ狭いところもあります。エディさんの車が四駆でよかったです(^_^;)途中、クリント・イーストウッドの別荘などを横目に見ながら、車でどんどん進んでいくと、さっきまでいたプリンスの庭とはえらく違う光景が広がってきました。見渡す限り、黒々とした溶岩が見えます。車が停まりました。着いたところは、イルカの来る入り江、「ラパルース(ラペロウズ)・ベイ」です。
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信じられない海の青さです!青いインクを流し込んだようです。黒い岩に青いインクの色。美しすぎるコントラストです。ここに来ると異常に風が強く吹いていました。キムに車から降りるようにうながすと、「ここにいる」って。やばい…段々、沸点に近づいている感じです。じゃあ待っててね、と、キムを気にしながら車から降りて、少しあたりを歩きました。先住民が岩で作った祭壇のようなものもあります。ここは神聖な場所のようです。
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色々と話を聞きながら、車へ戻り、また、来た道を引き返しました。前に荷物を置いた、丘の上まで戻り、じゃあホットドッグでもお昼に食べましょうということになりました。ところが、もうキムはダメ。またここに戻るのかよ!と思ったんでしょう。帰りたい帰りたいと叫びます。私も、もうこれ以上は無理だと思ったので、ホットドッグを急いで口につめこんで、キムと一緒にホテルの部屋へ一足先に帰りました。部屋に戻ったら途端にキムの機嫌は直りました。ごめんね…

こういうとき、つくづく思うのは、「旅行先でもヘルパーサービスを使えたらいいのに」ってことです。日本にいれば、「支援費制度」というものを利用して、ヘルパーサービスを月に何時間か使うことができます。つまり、家族以外の人に、キムに付き添ってもらうことができるわけです。

私たちがなにかしたいと思うことと、キムがしたいと思うことにはズレがあります。できるだけ、キムが喜びそうなことを考えるようにはしているものの、私たちもふつうの人間であり、とりわけ弟のロンは、ふつうの子ども。ふつうの子が喜ぶようなことを喜ぶわけですから、いつもキムに合わせていたら、彼は体験不足になってしまいます。

ですから、日本にいれば、例えば、キムが児童デイサービスというのに行っている間に、ロンを映画に連れて行ったり、ということをします。これはキムを疎外しているのとは違います。そのほうが、お互いのためになるからです。ロンのために、キムが生理的に耐えられないことに付き合わせることはできませんから。支援費制度を利用するために受給者証というのを持っているんですが、これの更新のために福祉課の窓口に行くと、窓口の人に驚かれるくらい、キムは色んなところに入れません。

映画館、遊園地、動物園、水族館、劇場…。およそ、普通の子どもが大好きなところは、全部ペケなんです。ですから、うちの家族にとって、「支援制度」は、ものすごくありがたいものでした。これがなかったら、じいちゃんばあちゃんが近くにいるわけでもない、転勤族の私たちは、いろんなものを犠牲にしなければいけなかったと思います。犠牲にすることが多すぎると、家族と言えど、「うらみ」の感情がわきます。これは良くないことです。家族の中で、障害児が本当の意味で、疎外されることになります。これを防ぐためにも、福祉サービスは大きな威力を発揮してくれる、と私は思っています。

話がそれてしまいましたが、とにかく、海外旅行にも、ヘルパーさんが欲しいと思いました(T_T)キムだって、私たちがシュノーケルしている間、一人で待ってるんじゃなくて、誰かそばにいて、一緒にお話したり、散歩したりアイスクリームでも食べたり、好きなときに部屋に戻ったりできていたら、こんなに機嫌が悪くなることはなかったはずです。「キムを無視してそんなことするあんたらが悪い」って言われそうだけど…だって、私たちだってふつうの人間だもの!楽しみたいと思うのは当然じゃないですか?しかも二度と来ることがないかもしれないハワイに来てるんですから。まあ、そんなこと、キムにとっちゃ関係ないんだけどね…。あーあ…お願い。誰か、障害者のための海外ヘルパーサービス、作ってくださいって感じよ(T_T)

エディさんの契約時間はもう少し残っていたらしく、旦那に聞いた話だと、私が去った後、エディさんは海でロンといっぱい遊んでくれたらしいです。ロンにとっては、とてもいい思い出になったようで、本当の親子のように楽しそうに遊んでいる写真が、何枚も残りました。日本に帰ってから幼稚園の先生にこの写真を見せたとき、「この人は父親じゃありません」って説明するのに苦労しました(^_^;)
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私たちみたいなどんくっさい親子に精一杯サービスしてくれて、エディさん、本当にありがとう。今でも、心からそう思っています。

この記事へのコメント

2006年03月30日 01:46
ミセス・ポッシブルさん 私の活動を載せてくれてありがとう。障害者を子供に持つ親の苦しみが、大変なことなんだということが、伝わってきます。私ももっとこのような境遇にある方達の力になりたいです。
自閉症については勉強不足で、どう対応していいか分からなかったので、キムちゃんには何もしてあげられなかったのですが、ロンくんには海の楽しさ、優しさ、偉大さが伝えられたと思います。
私の父は事故で失明したので、素敵なマウイの景色を見せてあげることができませんでした。しかし、昨日カヤックでクジラの歌声を聴いた感動なら伝えられるかもしれないと思いました。
http://mauiiruka.exblog.jp/
工夫すればどんな方にも自然の素晴らしさは伝えられると思います。
どうぞ、わたしに知恵を貸してください。
そして、障害者をお持ちのご両親やその兄弟たちに、ひと時の安らぎを与えられたら、わたしもとても幸せです。
ミセス・ポッシブル
2006年03月30日 15:36
うわ~、エディさん!書き込んでくださったんですね、ありがとうございます!感激です(T_T)あのときはエディさんのおかげで、ほんとに貴重な体験が出来ました。またマウイへ帰りたい~、次は是非エディさんプロデュースのアコモに泊まりたいです、いつの日か…
ミセス・ポッシブル
2006年03月30日 19:56
「障害のある本人が本当に楽しめる旅行」というのは、私もまだ試行錯誤しているところで、答えは出てませんが、「障害者の家族がほっとできる時間や安心して楽しめる機会を提供する」ことも、実は間接的にハンディのある本人のためになるんですね。こういうのをレスパイト・ケアといいます。介護者が健全な身心の状態になければ、しわよせがハンディのある本人にいくからです。悪いことに当事者である親(家族)自身が、「障害者の家族は犠牲を払い忍耐するのが当然である」かのように考え、「好きなことをやりたくてもできない恨み」を、「自分がいかに犠牲的であるかということをアピールし、犠牲的でない親を排斥する」ことで晴らそうとする傾向があります。つまり実は親(家族)を追い詰めているのは親(家族)自身だということです。家族にも人生を楽しむ権利があるはずです。障害者本人と家族が双方とも幸せになるには、第三者の支援は必須です。そして家族自身も、支援は必要不可欠なものだということ、家族で抱え込むことは、決して美談でもなんでもないのだということを、自覚しなければいけないでしょうね。

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